いつごろの出版か分からないが、ボロボロの宮田利夫著『新はがき用文』という手紙の書き方教本が見つかった。当座の余興に書き留める。
特徴は
勿論、候文」、漢字率、90%超」、「句読点なし」、漢字制限なし」、縦書き」といった物凄いもの。縦書き、字体などそっくりお見せ出来ないのは残念だが、昔の人々の素養の高さに驚く

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目 次
試験及第を祝する文 結婚を賀する文 違約断の文
出産祝賀の文 家督相續を賀する 雨具を返す文と返事
奉公人の世話を頼む文と返事

父母の安否を問文

洪水見舞之文
病気見舞ひの文と返事 入営を報ずる文 手傅を頼む文
出征を父母に報ずる文 天長節を祝する文 依頼催促之文
忘れ物問合之文

新年を祝する文

軍隊の景況を故郷に知する文
暑中見舞の文 寒中見舞の文 検査合格を報ずる文
戦地へ安着を報ずる文 貸品を請求する文 軍艦乘組を報ずる文
祭禮に人を招く文 火事見舞之文 我軍の凱旋を報ずる文
賣渡代金催促の文と返事 世話に成りし禮状文 従卒となりしを報ずる文
金子を借用する文と返事 代理を委任する文

【第33回】従卒となりしを報ずる文

手紙にて申上候私儀此度特撰にて某中佐殿の従卒と相成り今日より同邸に宿泊致し居り候間左様御承知被下候従卒と申せば外形は将校自邸の家僕の如く相見へ候へども其實は所謂付人にて品行方正精勤之見込の者より撰抜相成候事とて軍隊にては榮譽を得たる部分と致し候殊に小生は佐官の従卒に候へば餘程身の自由をも得られ候やうなれば先は御悦び被下度候右は御通報まで申上候以上

【第32回】我軍の凱旋を報ずる文

時下益御萬福奉祝候偖て小生等出征後こゝに年餘を經て海陸に於ける數十回の大小戦闘は我軍の連戰連捷にて終に敵軍をして戰闘力を失はしむるに至りし所彼遂に媾和條約の締結を乞ひしかば茲に一先休戰の命下り若干の守備兵を留め他は悉く凱旋致す事に相成り小生所属の聯隊は大抵今月の下旬に〇〇港出發の御用舩に乗組む筈に御座候何れ戰地に於ける愉快なる實験談は帰朝の上委細御物語可致候先は此旨不取敢御通報申上候

【第31回】軍艦乘組を報ずる文

寸楮拜呈春暖之砌益御安康奉遥祝候偖て生儀従来〇〇海兵團に修業罷在候處今回〇〇艦へ乘組み實地航海練習可仕事と相成り明日上艦致候間左樣御承知被下度已来の御發信には〇〇艦乘組水兵と肩書に御認めの程願上候右まで略草

【第30回】検査合格を報ずる文

過日は種々御手数を煩わし厚く御禮申上候偖て夫々準備の上當地にて検査相受け候處首尾克く合格當籤致し近衛騎兵に採用相成り誠に身の光榮と悦び候何れ其内帰國可致候へども此事のみ取敢へず御通報申上候

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【第29回】軍隊の景況を故郷に知する文

刻下陰晴定まらず不順勝の候に御座候處愈々御多祥奉大賀候下て迂生義も無事消光奉務罷在候間御放懐相成度候却説此度は御親切にも入營の御見舞を辱のふし御厚志の程奉欣謝候小生も入營當時は何かに附け不熟練の事のみ多く御座候ひしが方今にては大に諸務に熟達いたし候間右御安堵なし被下願上候先は御訪尋に預り候御禮めで略義ばがら一書拜復致し候猶委細は後便に萬々申述べく候頓首再拜

【第28回】依頼催促之文

謹啓仕候先般御願申上置候件如何相成候哉御伺申上候可成大至急御斗ひ被下取極まり次第御通知之程奉待入候匆々

【第27回】手傅を頼む文

期節相迫り明日より挿苗に取かゝり度候處御存之通り當方無人にて困窮罷存候間何卒御手助け下され度此段愚翰を以て御頼申上候謹白

【第26回】洪水見舞之文

此程之大雨にて諸川増水御地方出水之由新聞紙上に於て承知仕候御全家御容子如何可有之哉奉伺度候

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【第25回】雨具を返す文

先夜は思ひもよらぬ長座仕りその上御大切の傘拜借をかげを以て大雨を凌ぎ無事帰宅仕候今日幸便に托し御返し申上候これなる品乍疎末到来にまかせ進呈仕候御笑納被した候はゞ幸甚に候

同返事

先日は何の風情もなく例もながら失禮のみ仕候其の節の雨具わざわざ御返却にあづかりその上結構なる品もの頂戴仕り恐縮の至りに候御令闔様へもよろしく御鳳聲願上候敬白

【第24回】違約断の文

拝啓豫而御依頼の件早速取斗ふ可き考へに有之候處折悪しく俄に止むを得ざる要事出来御尊意果し難候間右御断り申上候何御面會之上萬々御話可申上候

【第23回】代理を委任する文

明日午前賣かけ金受取りとして出頭仕るべき旨某商會と約束仕置き候ところ昨夜来感冒にて他出仕りかね候につき御迷惑の義には候へども貴兄に小生の代理として該商會へ御出向き被下度この義折入って願上候

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【第22回】世話に成りし禮状文

拝啓仕偖此程中は永々御世話様に相成何共御禮の申上様も無之分て小生の一身上には種々御配慮を煩し候段奉萬謝候就ては其後一度は是非是非御訪問可仕之處多忙之爲其意を得ず近頃恐縮之至りに存じ候何れ近々御伺の上委細萬々御禮可申述候謹白

【第21回】火事見舞之文

昨夜は御近火と申し折柄風勢はげしく定めて御混雜のことと存候されど間もなく鎮火致し幸のことに存じ候その節何等の御損害も無之候ひしや早速参上仕るべきなれど三四日前よりにて打臥し居りにつき書面にて一寸御伺申上早々

【第20回】貸品を請求する文

先日は御光来被下候處何の風情も無之奉謝候其節御用立申候品物御用濟に相成候ば早速御返却に相成度此段一寸御請求に及候也草草

【第19回】寒中見舞の文

時節柄とは申しながら寒気酷しく候折柄御一同様益々御清適の由珍重この事に御座候この品些少ながら寒中御見舞のしるし迄に御目にかけ候防寒の料とも相成候へば幸甚の至りに御座候

嬉しいことに初めて単漢字変換をしなくて済んだ文章。

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【第18回】新年を祝する文

新年之御慶目出度申納候先以御尊家御揃御迎福御越歳之段欣喜不斜候隨て弊家無異事加齢仕候間乍憚御安神可被下候先は新年之祝詞申上度如此に御座候恐惶謹言

【第17回】天長節(天皇誕生日)を祝する文

本日は 畏も 我皇が天長の祝日にて門々の國旗も一段鮮かに拜され御同様奉祝賀候されば本日はいさゝか祝意をかね午後より小宴をひらきて太平に故服仕度御間暇にも候はゞ貴兄にも御来遊被下度何の御もてなしも無之候へども一同御来臨待上申候

【第16回】入営を報ずる文

前略陳ば小生出立之際は態々停車場まで御見送り被下候処何日當地へ着翌日第何師團歩兵第何聨隊第何大隊第何中隊へ編入相成候間御休神被成下度猶ほ營内の状況は不案内の事故御知せ申し難く候へ共次便には詳細御報告可申上候

第2次世界大戦(太平洋戦争)勃発の日とされる12月8日に因んだ手紙。こんな手紙を書かなくて済む平和の有難さをつくづく思う。

【第15回】父母の安否を問文

謹で寸楮拜呈仕候其後は久々御拜顔を得ず誠に千秋の思いに存候折から御兩親様方印起居如何御暮し被遊候哉奉伺度小生事も幸に至て壮健に罷在候間御安意被下度餘り不順故御案事申上御喜嫌一寸奉伺候時下節角御大切に御自愛専一に奉祈候九拜

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【第14回】家督相續を賀する文

謹啓仕候かねて御もの語有之候通御令息樣家督御相続被成候趣大慶この上もなきことに御座候御幼少の頃よりして神童の譽れ高く村内屈指の御高才に候へば今後御家聲のいよいよ隆昌なるは勿論したがって村内の利益も不少と確信仕候この品乍輕微寸賀の印までに進呈仕り候御笑納被下候に於ては一入欣喜の至りに候謹白

【第13回】結婚を賀する文

月下氷翁の縁の糸に御良縁御結び相成候由御家門一層の御光榮を添へさせられ候御事と祝賀申上候麁末ながらこの品御目にかけ候間幾久しく御笑納被下度候先は御祝ひ迄かくの如くに御座候

【第12回】金子を借用する文

甚だ申上げ悪くきことに候へども商用上一時差支を生じ仕入方に困却仕居り候につき金何圓来る何日迄のところ御融通被下間じくや」この義何卒御承引被下度候

同返事

貴命の趣商業上御同様有がちの事何よりお安き事に候幸ひ手許に御座候間無遠慮御使用被下度候

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【第11回】賣渡代金催促の文

先達て御買取被下候物品の代金昨日中の御渡し被下候御約束のところ未だに何等のお話しも無之御都合いかゞに御座候や何卒至急御支拂相成度この段悪しからず御取計ひ被下度候也

決算も近い。今、こんな督促をしたら何て言われるだろう。

【第10回】同返事

御地の大祭とてわざわざ御招き被下ありがたくぞんじ候貴意にまかせ小供引つれ當日は御邪魔仕るべく小供等はすでに指折りてその日を樂しみ居り候

漢字変換に意外と手間取った字。發・數・樂。

【第9回】祭禮に人を招く文

来る何日は當地鎮守の大祭にて本年は氏子一同大奮發にてすでに山車數本を引出しその外種々の催しも有之候間當日には御子供樣御同道にてお泊りがけにて御入来被下度待入申候也

原文の禮の字は「ネ」(しめす偏)」。

【第8回】戰地へ安着を報ずる文

以幸便申上候偖て出發之際御報申上候通り本月○日○○軍港より御用舩○○丸に乗組み海路無事○○に上陸せしは○○日の午前○時に御座候即時急進して○○と申す村落にて露營致し候こゝ四五日にて戦線に出候かと存じ候へば日頃うなりし腕前を奮ふべき時期到来と不知愉快の念充ち満て身内の振を覺候不取敢安着の御報までしかし之が迂生最後の筆と思召下さるべく候

広島、長崎原爆の日が過ぎ、終戦の日も近い。かって若者はこんな手紙を書いた(書かされた)のであろう。おそろしい時代だった。文中青字のところはどうしても漢字が見当たらなかった。原文は変体ガナと漢字が使ってある。

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【第7回】暑中見舞の文

炎暑難堪之候御起居如何被為在候哉御伺申上候其後は御無音に打過申譯無之平に御寛宥被下度候此品甚輕微には候へども暑中御見舞之驗迄進呈仕候御笑留下され度候頓首

ドッと汗が出ます。

【第6回】忘れ物問合之文

昨夜は参堂意外之御馳走に相成奉深謝候其際風呂敷包失念致候と存候若し有之候はゞ此者へ御渡し被下度奉願候末ながらご令闔様へ宜敷御鶴聲奉願上候

【第5回】出征を父母に報ずる文

謹で寸楮呈上仕候陳者豫て御話申上候通愈々兩三日の内當地出發敵地へ向け進軍の筈に有之多年の本懷漸く機至り誠に嬉敷存候就ては豫ての御教訓を守り一死以て皇恩に報ずるの外更に何等の考も無之決して未練卑怯の行為は致す間御安心被下度尚申述たき事は海山有之候へ共匆忙の際其意を得ず不取敢御暇乞まで頓首

この用文集にはこの種の文例が多い。終戦の日も近いが、再びこうした手紙が書かれてはならない。国防意識に関する議論も聞くが、命に代えても守る『価値ある国』に関する議論は余り聞かない。国政に携わる人々、金融業界の幹部達の顔写真がダブって浮かぶのは何故か?

【第4回目】病気見舞ひの文と返事

鄙簡謹呈仕候承れば尊体過日来より不順の気節に冐され病床に御座あらせられ候趣き驚愕仕候格別の事には無御候哉誠に昨今は時候不順にて壮健のものと雖も大いに身体に相感じ申候間精々御加養一日も急く御本服あらんこと奉祈候就ては早速参堂御見舞可申上の處日夕多忙に打ち紛れ寸暇も御座なく何れ両三日中には参趨御訪問可仕候得共先取敢ず書面を以て御見舞申上候餘は拝眉萬縷可申述候也頓首敬白

小生の病気御心にかけられて態々の御見舞状ありがたく拝見仕候昨今は大に快方に赴き候間乍憚御休神被下度原因は時候當りに候間不日全快致すべくと存じ候先は御返事まで匆々

かえって具合が悪くなりそう。兎に角、単漢字検索の練習と漢字の素養を付ける訓練にはなる。

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【第3回目】奉公人の世話を頼む文と返事

従来召使ひ居り候下婢病気のため宿許へ引取り無人の折から差當り困入其間もし御心當りに相應のもの御座候へば至急御周旋被下度く給金その他は本人に對しよくよく相談可仕先は願用迄早々

御申越しの件委細承知仕候へども只今は心當りのものも無之候へどもいづれ諸方を問合はせ御家適當の人物御周旋可仕先は御返事迄早々

【第2回目】出産祝賀の文

肅白承り候はゞ今般御令闔様平産被遊殊に男子御出産の趣き重々芽出度存候就ては慮外ながら右御喜の印にまで端書を以て祝賀申上候時下不順御兩所御自愛專一に奉祈候餘は何れ不日参堂改まり御悦申述べく候也敬白

所々に使っている用語があって、年を感じました。

【問題】厳密にいうと、原文と異なる漢字が1文字あります。さて、どれでしょう。

【第1回目】時節柄、受験合格のお祝い文から。

試験及第を祝する文

一翰拝呈仕候陳者豫て御擧行中の定期學術試験一昨日を以て結了なし今日尊体には及第證を拝受被遊候趣き何たるの盛事に御座候哉尊体の御歡喜如何許かと被爲推御羨ましく奉存候此と申すも必竟するに皆な尊体が平素より御苦學御勉強被遊候結果に御座候間此後とも益々御勉勵被遊候て一時も急く御英名を御輝かし被下度先は御及第の祝詞を兼ね右御悦び申上候匆々

チャンと読めますか。これだけで試験問題になりそうですね。現在の模範文はどうでしょう。
【問題】厳密にいうと、原文と異なる漢字が2文字あります。さて、どれでしょう。

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